14713人が本棚に入れています
本棚に追加
「おやおや、これはこれは、劇の真っ最中でしたか」
「あ、しんぷさまだー!!」「しんぷさまー」「わーい!!」
扉を開けて、街の神父様が、優しい顔を出した。
何人かの子供が駆け寄る。
「いまからねーたいけつなのー」「ももたろうとおにがたたかうのー」「すごいんだー」
「おやおや、よいところを邪魔してしまったようで……すみませんね」
神父様が困った顔で眉を下げる。
「いや、ちょうど区切りが良かったですよ。さて、みんな今日はここまで。神父様の話を聞く時間だ」
「えぇー…続きはー」
「続きは明日。……立ちふさがる鬼の大将、傷つき倒れる三匹……果たしてももたろう達は平和を取り戻す事が出来るのか!! 次回!『ももたろう大勝利! 希望の明日へ、ピーチGO!!』お楽しみに!」
次回予告と共に、子供達を神父様の方へ追いやる。
「明日は剣士オリーブがみたいなー」
「バカ! ももたろうだよ!」
「やだあ! オリーブだい!」
「ももたろう!!」
「ほらほら、ケンカしない。ももたろうとオリーブに怒られるぞ」
「うう…だって…」
「オリーブはももたろうが終わったらやってやるから……な?」
「はーい……」
「よし、偉いぞ! 聞き分けがよくないと立派な騎士になれないからな! ……さて、神父様の話を聞きな」
「わかったー」
俺のくだらん一人劇も、純真無垢な子供達には絶大な人気を誇り、その中でも『ももたろう』と『剣士オリーブ』は人気を二分する双璧だ。
男の子も女の子も、この街の子供はみんなヒーローに憧れるのか。
特に、試しに言ってみた『立派な騎士になれないぞ』がかなりの効力を発揮した事からもその傾向がうかがえる。
……レナさんとかの影響だろうか?
「みなさん、黒騎士さんのお話は面白かったですか?」
「面白かったー」「でも、しんぷさまのおはなしもすきー」
「それはそれは、でも、今日はお勉強の日です」
「「えぇーー!!」」「「わーい!!」」
反応が綺麗に割れた。
「こら、ちゃんと勉強しないと、立派な騎士になれないぞ」
「うぅ……」
魔法の言葉で子供を操る。
「助かります」
「いえいえ」
どうして神父様がこんなとこにいるのかというと、実はこの集まり、簡単に言えば幼稚園のようなもので、神父様は、言わばここの先生役なのだ
最初のコメントを投稿しよう!