日常

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「おやおや、これはこれは、劇の真っ最中でしたか」 「あ、しんぷさまだー!!」「しんぷさまー」「わーい!!」 扉を開けて、街の神父様が、優しい顔を出した。 何人かの子供が駆け寄る。 「いまからねーたいけつなのー」「ももたろうとおにがたたかうのー」「すごいんだー」 「おやおや、よいところを邪魔してしまったようで……すみませんね」 神父様が困った顔で眉を下げる。 「いや、ちょうど区切りが良かったですよ。さて、みんな今日はここまで。神父様の話を聞く時間だ」 「えぇー…続きはー」 「続きは明日。……立ちふさがる鬼の大将、傷つき倒れる三匹……果たしてももたろう達は平和を取り戻す事が出来るのか!! 次回!『ももたろう大勝利! 希望の明日へ、ピーチGO!!』お楽しみに!」 次回予告と共に、子供達を神父様の方へ追いやる。 「明日は剣士オリーブがみたいなー」 「バカ! ももたろうだよ!」 「やだあ! オリーブだい!」 「ももたろう!!」 「ほらほら、ケンカしない。ももたろうとオリーブに怒られるぞ」 「うう…だって…」 「オリーブはももたろうが終わったらやってやるから……な?」 「はーい……」 「よし、偉いぞ! 聞き分けがよくないと立派な騎士になれないからな! ……さて、神父様の話を聞きな」 「わかったー」 俺のくだらん一人劇も、純真無垢な子供達には絶大な人気を誇り、その中でも『ももたろう』と『剣士オリーブ』は人気を二分する双璧だ。 男の子も女の子も、この街の子供はみんなヒーローに憧れるのか。 特に、試しに言ってみた『立派な騎士になれないぞ』がかなりの効力を発揮した事からもその傾向がうかがえる。 ……レナさんとかの影響だろうか? 「みなさん、黒騎士さんのお話は面白かったですか?」 「面白かったー」「でも、しんぷさまのおはなしもすきー」 「それはそれは、でも、今日はお勉強の日です」 「「えぇーー!!」」「「わーい!!」」 反応が綺麗に割れた。 「こら、ちゃんと勉強しないと、立派な騎士になれないぞ」 「うぅ……」 魔法の言葉で子供を操る。 「助かります」 「いえいえ」 どうして神父様がこんなとこにいるのかというと、実はこの集まり、簡単に言えば幼稚園のようなもので、神父様は、言わばここの先生役なのだ
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