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「いやいや、見事な騎士っぷりです」
「ははは、フリですよ、フリ。」
菓子配りが終わるまで暇なので突っ立ってたら、同じく手持ち無沙汰になった神父様が話し掛けてきた。
「フリで子供達が礼儀正しくなるなら、いいじゃないですか」
「まあね。……神父様、俺って、勉強の邪魔になってませんか?」
「とんでもない! それどころか助かっていますよ。あの劇目当てに増えた子もいますし、そういう子も、あなたが上手く言ってくれるので、よく勉強に集中しています。前からいる子も、より勉学に励むようになりました」
「そりゃ良かった」
「……それに、ホワイトのおかげで、私もこうして時間を取れるようになりましたし。コレンも菜園に集中できると喜んでいます」
「ああ、ありましたねそんな事も」
神父様が言っているのは、前に俺がやった、寄付代わりの、ちょっとしたお礼の事である。
俺はこの1ヶ月、約束通り毎日教会に行った。
そして、お祈りを教わったり、神話を聞いたりしている内に神父様とも親しくなり、教会の事についても喋るようになった。
その中で知ったのだが、毎朝6時ごろから夕方6時まで、約三時間毎に鳴り響く鐘は教会の鐘で、教会の巨大な砂時計が落ちる度に鐘を鳴らしているらしい。
そしてその役目は、神父様と、教会の掃除や庭仕事を手伝ったいるコレンという男が交代でやっているというのも聞いた。
神父様がポロッと零したところによると、時間になる度に二階まで上がって鐘を鳴らし、大砂時計をひっくり返すというのはかなり重労働らしい。
時間を忘れてはならない、というのも精神的に疲れる、とも。
今のは忘れて下さいと、恥ずかしそうに言う顔は、よく覚えている。
それから、気になって教会をよく観察したところ、教会の建物もだいぶ古びて、所々が修繕されないままになっている事も気づいた。
神父様に聞けば、忙しくて手が回らない上に、修繕のための費用も、寄付だけではどうしても足りないと言う。
……これはしめた、と内心で呟いた。
信者でもない俺に、ここまで親切にしてもらったお返しができないかと、前々から思っていたのだ。
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