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『……キャンセル、しますか?』
追い討ちをかける栞の声。
そして数秒の無言の後、目配せした三人はちらりと時計に目をやり、すっくと立ち上がる。
「冗談言っちゃいけねえよ!」
三人の声が見事にシンクロして、指令側のインカムに大音量で突き刺さる。
その声に顔を顰めたのもつかの間、画廊の外壁をひらりと乗り越える影が見えたかと思うと、あっという間に当たりは再び静寂を取り戻していた。
『お前ら……』
ひときわ低い呆れ返った声は彼らの耳には届いてはいるだろうが、敷地内に入ったら反応は省略するのが約束事。
だが、無言ながらわずかに聞こえる息遣いは明らかに笑っている。
どこまでも能天気で自信家の役者を三人も抱えたリーダーは、小さくため息をついて手元のノートパソコンに短い一文を打ち込む。
23:47 Show time start
ディスプレイに照らされた顔は一見顰め面だが、その頬は少し、緩んでいた。
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