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廊下には各コーナーごとにセンサー式の監視カメラが設置されていた。 赤いLEDは稼動中の証だが、そんなものはお構いなし。 おまけに時折カメラに向かって手を振ったりもしながら三人はずかずかと目当ての一室に向かっていく。
『お前らいい加減にしないと、カメラ戻すぞ?』
とどまることを知らない調子のよさに呆れた征士が再び窘める。
彼らの様子を目にすることが出来るのは、征士と栞、そして結城の三人だけ。
守衛の詰め所に映し出されているモニターはおそらく微動だにしていないだろう。
いや、正確には一度だけ微動しているのだが、それも少し詳しい程度ではまず気付くことは無い。
何故なら栞が入手したばかりの一時間前の監視カメラの映像が、延々ディスプレイされているのだから。
足取り軽く、けれども用心深く。
死角に注意しながら歩み進めるが、不気味なほどに人の気配が無い。
"盗みに入りますよ"とあらかじめご挨拶してあるにもかかわらず、今のところそれに警戒している素振りが全く見られず、寧ろ今までのところよりも数段は入りやすい程。
「なんか、キモくねぇ?」
さすがに気味が悪くなってきたのか、陽が声をひそめると、真騎も詩葉もこくりと頷く。
目当ての部屋はもう目の前。
後は絵をはずし、そこで初めて作動するであろう警報装置を潜り抜けて帰ってくればそれで終了。
そのスムーズさが恐ろしいのだ。
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