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皮手袋に包まれた手がゆっくりと額縁と壁を離す。
案の定その隙間にあったセンサーが異変を関知し、静かだった警報システムが一斉に作動し始める。
サイレンにパトランプ、そして館内全ての照明が点灯。
わかってましたとばかりに全力で駆け出そうとした陽の足が突然、何かにつけて捕らえられた。
先ほどからリーダー格で話をしていた男が、陽の足首を掴み、ものすごい形相で睨み上げている。
「……返せ……クソっ……」
ゼイゼイとわき腹を押さえ、必死に足を掴む男。
「……あのね」
あれだけやられてまだ不満か。
それよりもあれで気絶させる事が出来なかったのが少々口惜しい陽は、けたたましい警報音と規則的に強い光を放つパトランプの中で少し苛立ちを感じ始める。
それを隠してかそれともむき出しにしてか、陽は男の前髪を鷲掴みにして持ち上げる。
「悪いけど、俺の足掴んでいいのって、俺にご奉仕してくれる女の子だけなんだよね」
そう言ってうつ伏せのまま持ち上げられた男の頭を髪の毛ごと引き上げると、高い位置からパッと手を離す。
「早く!本格的に来るよ!」
「おう!」
叩き割った窓の向こうで急かす詩葉に声だけ答え、陽は一度その絵をまじまじと見る。
(なんでこんな連中がこんな絵を守りたかったんだろ?)
引っ掛かりを覚えた陽は何気なくその絵を裏返して持ち直そうとした。
「……あ」
本来木目が現れるはずのそこに隠されていた理由。
瞬時にそれを理解した陽は、それに手を加えてから慌てて二人の後を追う。
警備会社の車とパトカーがやってきたのは、それから優に三十分は経過した頃だった。
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