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  愛凛に何を言われたのか、陽の胸の前にしっかりと抱き抱えられた戦利品の裏側は、意図していた訳ではないが誰にも知らせては居なかった。 怪訝そうながら一路湾岸方面へと方向を変える車に揺られ、陽と愛凛の会話は続く。 「……そっか、わかった。良かったよ、持って帰れなんて言われなくて。そんなこと言われたら俺、尊の事ぶっ殺すとこだった」 いささか物騒な結びの後、陽はパタンと携帯電話を閉じる。 狭すぎて胸に抱えたまま見せる事の出来ない絵画の裏側を眺め、不思議そうな残り三人に陽は木目の変わりに埋め尽くされた何かの説明をしはじめた。 「うっわ、ハルのぶっ殺す発言かぁ」 「困ったぁミコちゃん殺されちゃうぅー」 「愛鈴、僕だって傷つく事ってあるんですよー?」 楽しそうな愛凛の報告を受け、買い出しから戻ってきたばかりの尊はけらけらと笑う。 カップラーメンを前に嬉しそうに箸を割っているところを見ると、さらさらそれを持ち帰らせる気はなかったらしい。 それどころか、陽を除く車内の面子すら知らないそれを、どういう訳だか彼は知っているようだ。 相変わらずの主旨のない指令に踊らされた早雪は、小さく溜め息をついて湯気の前に立ちはだかる。  
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