READY STEADY GO

Blue Velvet

「だってだってだって、あいつら呼ぶと俺目立たなくなるんだもん……」

「そりゃお前、力量の差だ。二十五で会社経営なんつったら普通は相当な売れ筋なんじゃないのか？」

なのに何故お前は、とでも言いたそうな早雪の哀れみの目。

手渡された資料を元に緊急会議が執り行われる中、一人戻ってきた早雪に尊は早速愚痴を零していた。
その姿はまるで、駄々をこねる子供だ。

「だってさぁ、こないだ真騎とハルと飲みに行ったらさぁ、真騎はさっさと偽の名刺出して音楽プロデューサーだって言うんだぜ？ハルはハルであの童顔で小首かしげてニコニコニコニコ笑ってさ、俺完全に影に隠れてんの」

「相手が悪いんだ、諦めろ」

まだ何か言いたげな尊の言葉はあっさり打ち切られた。

代わりに机の上に置かれたのは、他でもなく"今夜"の図面と資料。
カラーコピーで手渡された群青の抽象画は成る程美しい色彩だったが、号数と言い年代や画家名と言い、高価な代物とは言い難い。