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「なんかさぁ、俺らっていつも尊の言いように踊らされてない?」
「やだハル、今頃気づいたの?」
「いや、一番最初から気づいてたけど」
とっぷりと夜も更け、時間は日付変更の三十分前。
目的の画廊の数十メートル手前の暗がりには、既に手早く準備を整え準備運動に励む実行部隊三人の姿があった。
「ていうか、特別技術職の手当てとか無いのかなぁ」
「え、俺金銭面は満足」
「俺もやなぁ」
「マジ?」
「まー、オンナノコは金かかるからな。栞みたいなタイプはそうでもなさそうやけど、詩葉みたいなタイプは特になぁ」
「ちょっと、それどういう意味よ真騎」
『……あのさ、お前らいつもそうだけど、緊張感って言葉知ってる?』
裏事情も個人名も、場所を構わず口に出すのは、彼らの自身の表れ。
それはわかっているが、指令する側としては気が気でないのだろう。
インカムから堪りかねた征士の声が聞こえ、三人は思わず苦笑いをして口を噤む。
「けど、なんかおかしない?」
遠くの電車の音も、少しはなれた繁華街の音も聞こえてくる、静かな路地。
壁を隔てて見える目当ての画廊は、恐らくいつもと変わらないであろう静けさで。
尊が出した予告など、そ知らぬ顔をしているように見える。
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