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「おばあさん!助けて下さい、おばあさん!」
僕は老婆に助けを求めた。老体でこの鎖がどうにかなるとは思わないが兎に角どうにかしなければ。
「黒髪生きとったんか!?」
いきなり目前に現れた老婆は唾液を僕の顔に飛ばした。
「……死んでませんよ。おばあさん助けて下さい」
僕は手足を動かす。老婆はそんな僕をみて口をひん曲げた。
「いやじゃ!!お前に使うための鍵など持っとらんわ!!」
どうやら錠を解く鍵を持っているらしく、右手をぎゅっと隠した。
「……その、鍵は誰のために使うための物なんですか?」
「わしの息子のためじゃ」
という事は老婆の息子も僕と同じように、長細い箱の中で身動きが取れない状況なのか。
「息子さんはどこに?」
「この部屋におる」
そう言うと老婆は辺りを見渡した。どこまで広いのか分からないが直ぐには息子とやらは見つからないのだろう。老婆の顔からは疲労の影が見える。
「それにしても此処はどこですか?」
記憶喪失と言うのかも知れないが箱に入る前の記憶がないのだ。入ってからも眠っていた気がするから、全ての記憶が無いに等しい。
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