第1章 赤目の少女

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そんな面白味のない俺の人生に唯一訪れたイレギュラーがこの世界だった。 初めて此処に来たのは高校の卒業式を前日に控えた三月中旬の事。 そこから約一週間のサイクルで二回目。続いて三回目を経験し、そして今回が四回目となる。 最初は卒業を前にして柄にもなく精神が不安定になっているんだろうと思っていた。 が、流石にそれがほぼ規則的に何回も続けば色々と考えてしまうのが人間の性と言うもの。 ゴーグル先生で調べたところ、夢は記憶の整理を行ったり自分の精神状態を示すとの事。 しかしこんなホラーゲームみたいな世界が今の精神状態だと言うなら俺はそろそろ黄色い救急車を自宅前に呼ばなければならない頃合だろう。 正直なところを言うと三回目の時点で精神科に行こうとも考えはしていたのだが、生憎その週はバイト漬けだったので、 『あと一回同じ夢を見たら、その時は必ず病院行こう』 なんて考えて。まあぶっちゃけ医療費をケチろうとか考えていたのだが、どうやらなけなしの生活費を削る事は避けられない様だった。 「精神科ってどんぐらい金かかるんだろうな。行った事ないから全然わかんねぇや」 バイトのみで生活費を稼ぐ豊かとは到底言えない自分の財政事情を鑑みると医療費が高くない事を祈るばかりである。 ――そしてそんなずぶずぶと底なしに沈んでいく気分の降下速度へ拍車をかける。人の呻きにもよく似た、邪悪の獣声が鼓膜を振るわした。 「ァ――……ァァ……」 「来たか。今日はいつもより少し遅かったな、バケモンさんよ」 口から漏れる声は自然とうんざりとしたものになり、俺は視線を背後に感じる気配へ。 振り返る狂った夢の世界。その中に見たのはこれまた現実では考えられない様な。何もかもが歪み、狂った存在だ。
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