第一章 天からの制裁

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1 昨日の流行りは今日のスタンダード、そして明日には廃れていく… この街は生き物だ。 王文武は<WEN国際電子>のビルの窓から広がる上海の風景を眺めながら思った。 15年前とは比べ物にならないほどの成長に文武も驚きは否めない。もちろん、文武自身その成長の手助けをした。あるいは街の成長に助けられたからこそこのように高層ビルから上海の街を見下ろす事ができているのかもしれない。 WEN国際電子はその名の通り中国だけでなく世界的な流通を視野に入れたコンピュータや電子端末、ソフトウェアなどを開発する企業である。中国では最大、同分野で強みを見せる日本や韓国にさえひけを取らない勢いで規模を拡大している。そして、アメリカのトップリードであるパーロフォン社とのスマートフォンの共同開発のプロジェクトが動き出している。 文武は上海の風景に背を向けるとデスクチェアにふんぞりかえって煙草に火を点けた。 広い社長室に一人、急な仕事も無くゆったりとした午後を過ごしていた。 「入っていい?」 近松雪子が扉の向こうで言った。 「ああ、構わないよ」 しかし、文武の答える頃には既に部屋に入っている。 「どうした?」 「今度のパーティーで話す事はも う考えてあるの?」 「まだちゃんと考えちゃいないよ。ただ鈴麗に考えてもらうのはやめだ。自分の言葉で話してみるつもりさ」 「良い事じゃない。マーティン社長もいらして下さるしすごく楽しみなのよ」 「もうすぐ夢が叶うんだ。毎日眠れないよ」
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