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 あの頃の事で頭に思い浮かぶのは──  純白の壁に包まれた校舎。  遠くに見える天空にまで聳える無数の塔群。  澄み渡る中庭の池の水面(みなも)。  塵の舞っていない大気。  初老の貴婦人である校長先生。  空を横切って行く渡り鳥。  富裕層の子息達が通う私達の、女子高に汚れた物など一つも見当たらなかった。  廊下の隅に溜まっている埃なんて一切、記憶にない。  運動した後の更衣室にすらラベンダーの香りが薄く漂う。  私達は、そんな──  完璧にセットされた清潔感の中を、舞う様に生きていた。  ある日、いつもの様に親友の“彗星 サミ”と“惑野 メイ”と帰宅しようとした所 ──  突然、サミが宣言したのだ。  「革命を起こす」と。  彼女は、虚ろな目で続けて訴えた。  「暗黒があるからこそ月や星は美しく輝き続けるのではないか? 」と。  呆然とする私とメイが蒼い空を見上げると、細く長い飛行機雲が地平線まで伸びていた。 ・
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