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「ねえ輪廻、あれ何かな」
そうして二人で歩いていると突然優貴がそう言って立ち止まった。
「そんな事も分からないのか?無知な奴だ。まったく愚かしい。この優貴め!」
「なんで僕の名前を悪口みたいに言ってるの!?」
「喧しい喚くな。まったく……」
輪廻は優貴の言葉を一蹴し、優貴の見ている方を指差す。
「見ての通り魔法陣だ」
輪廻の言う通りそこにあったのは、幾何学模様の光り輝く魔法陣だった。
「なんでそんな物があるのさ!?」
「愚かしい奴め。お前を勇者として異世界に召喚するために決まってるだろ」
「意味分かんないよ!というかさっきより近づいて来てない!?」
「確かに近づいて来てるな」
輪廻は魔法陣をちらっと見て事も無げに言った。
魔法陣は最初、十メートルくらい離れていたが、その距離は今では三メートル程まで縮まっていた。
「なんでそんなに冷静なのさ!」
「喧しい。いいからさっさと逝け」
輪廻は優貴の背中を蹴りつけた。
「なんか字が違う、って、うわああぁぁぁぁ」
優貴は突然の事に堪えられず、前方につんのめって、一メートル程まで近づいていた魔法陣に吸い込まれるように消えていった。
「さらばだ優貴」
優貴が消えたのを見届けた輪廻は、魔法陣に背を向け歩き去ろうとした。
しかし、一歩進んだ所で立ち止まり、何かを考えるように顎に手をあてた。
「……ふむ、こんな面白そうなイベントを優貴だけに遣らせるのは面白くないな……」
オモチャいや、親友(笑)が居なくなってしまうと退屈になるしな……
「よし、俺も行くか」
輪廻は振り返り、優貴が入ってからどんどん小さくなっていく魔法陣に自ら飛び込んだ。
「さらば我が世界!いざ行かん、新たな世界!クハハハハハ!」
後には輪廻の笑い声だけが残り、輪廻と優貴を飲み込んだ魔法陣は、最初から何も無かったかのように跡形も無く消え去った。
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