玉手箱

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「兵六さん、どうかしたんえ。」 「おすわよ。お前が探している太郎たあお前の旦那かい。」 するとおすわは口に手を当て笑った。 「まさか。太郎様はそんなでない。」 「じゃあ何か。お前の想い人か。 まあなんでも構わないが、お前、その男諦められねえか。」 兵六はいやに真面目な顔でいう。 しかしおすわはそれをまるで気にした様子はない。 「お前もいつまでも若くねえ。どこか他の男の許へ嫁がないか。幸いか、お前は器量も気立ても好い。今ならいくらでも貰い手があるわい。」 兵六はやはり、耕作に言われたことを気にしているらしかった。 おすわはその言葉に冗談ぽく答えた。 「ならば兵六さんが貰ってくれるのかや。」 「馬鹿いうな。おらに嫁はいらん。」 「あらあら。私を人様に押し付けるのかい。だいたい、やだよ、私はもういき遅れだから。」
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