玉手箱

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まるで聞く気がないおすわに兵六は頭を抱えた。 対しておすわは未だ冗談ぽい笑みを浮かべたまま、残りの粥をすすった。 兵六はため息をつくとやれやれといった風に首を振り、手にあった椀をおいた。 疾うに食事を終えていたらしい。 そして片膝を立て立ち上がると勝手口の方に行こうとした。 「兵六さん、どこへ。」 「酒を飲むのさ。 今晩は冷えるらしいから。 それにここのところずっと魚がないから景気づけに。」 「ならば私が支度しよう。座っていてくれ。」 おすわは食べ終わった椀を持ち勝手口に消えた。 兵六はそれを見送ると元いた場所に座った。 囲炉裏を眺め、火が弱くなったと思い炭を雑に投げ入れる。 燃える火をぼんやり見ていると、突然、勝手の方からおすわが驚く声がした。 兵六は何事かとそちらに行こうとするがおすわがすぐにこちらへ戻ってきたためそれは無用だった。 血相を変え飛び込んで来たおすわの手には見覚えのある黒塗りの立派な箱があった。
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