玉手箱

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「やいやいおすわよ。何を泣くのだ。 お前の探していた太郎とはじっさまのことなのか。」 するとおすわはこくこくと頷いた。 「そうか。 気の毒なことをした。おらぁてっきり太郎たぁ若いもんだとばかり。 まさかお前が探す太郎がじっさまとは思いもしなかった。」 しばらくして落ちついたのか、おすわは泣きながらも口を開いた。 「して…太郎様はどうなされた。」 兵六は真実を言うのを一瞬躊躇ったが、知らせぬも哀れ、ぽつりと呟いた。 「じっさまは死んでしもうた。」 次の朝、兵六が目を覚ますとおすわはあの箱と共に跡形もなく消えていた。 兵六はいつものように竿を持ち、海へ出た。 その日は何故か、久方ぶりに魚がよく釣れた。 2013.07.14
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