0人が本棚に入れています
本棚に追加
「やいやいおすわよ。何を泣くのだ。
お前の探していた太郎とはじっさまのことなのか。」
するとおすわはこくこくと頷いた。
「そうか。
気の毒なことをした。おらぁてっきり太郎たぁ若いもんだとばかり。
まさかお前が探す太郎がじっさまとは思いもしなかった。」
しばらくして落ちついたのか、おすわは泣きながらも口を開いた。
「して…太郎様はどうなされた。」
兵六は真実を言うのを一瞬躊躇ったが、知らせぬも哀れ、ぽつりと呟いた。
「じっさまは死んでしもうた。」
次の朝、兵六が目を覚ますとおすわはあの箱と共に跡形もなく消えていた。
兵六はいつものように竿を持ち、海へ出た。
その日は何故か、久方ぶりに魚がよく釣れた。
2013.07.14
最初のコメントを投稿しよう!