猫は雨の日に。

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口の中に甘ったるいチョコレートの味が広がると、涙がこみ上げて来た。 机の上に置いてある紅茶のティーカップに小さく波紋が広がる。 頬を手のひらで乱暴に拭うけれど、とめどなくあふれてくる。 着ていたパーカーの袖にシミをつくっただけだった。 腕の中で徐々に体温が失われていく感覚が、今でも鮮明に蘇ってくる。 ‐今朝のことだった。 どしゃぶりの雨が、アスファルトを打ちつける中。 赤い傘をさして、横断歩道をわたるとき。 私の視界のすみを何か黒いものが横切った。 それはすごいいきおいで私を追い越すと、宙を舞った。
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