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クラクションが鳴り響く中、数メートル先にスローモーションでそれが着地する。
まっ黒な、猫だった。
やっとのことで視界から得た情報を理解すると、私は猫に駆け寄った。
そっと抱き上げて、歩道に移動する。
猫をひいた車の主は、窓ごしに私と猫を確認すると、何事も無かったかのように走り去って行った。
小さな舌打ちの音が聞こえたかのようだった。
猫はまだ呼吸をしていた。
胸の辺りがゆっくり上下して、目も開いている。
けれど猫を抱き上げた私の腕には、ぬるりとした温かい液体の感触があった。
あの車と同じような、鮮やかな、赤。
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