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随想録1~犬塚信乃~
「現在(いま)って…何年?」
今でも思い出せる、その娘の第一声。
某―――――――――犬塚信乃戌孝(いぬづかしのもりたか)は、滸我(こが)におわす足利成氏(あしかがしげうじ)公に仕官するため、故郷・大塚村から旅を始めていた。
その娘と出逢ったのは、道中で通った円塚山(まるつかやま)での山中。道端に倒れていた娘を初めて目にした時、ひどく驚いたのをよく覚えている。
「浜路…?!」
異風の体(てい)に尼のような髪。見た事のない装束を身に着けていたのにも驚いたが、何より印象的だったのは…故郷に残してきた許嫁・浜路(はまじ)と顔がうり二つだという事実だった。
その後、その娘とは滸我へ着くまでの道中を共に旅して一旦別れる事となる。名は三木狭子(みききょうこ)といい、姓を持つからにはどこかの武家出身の姫かと思いきや…本人が申すには、500年以上先の世から来たという。
滸我までの道中は、あまりに目新しい出来事が多くてよくは考えていなかったが…この狭子との出会いが、己の生き様を大きく変える運命的な出会いになろうとは、当時は全く考えていなかった某であった――――――――――――――――――――
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