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この行徳へたどり着くまでの間、法師殿は狭と共に旅をしてきたという。また、狭となぜ行動を共にしていたかも語ってくれた。
「…では、拙者はこれにて」
「法師様!お気をつけて…!」
その翌日、行徳を出る前に我らは法師殿の出立を見送った。
ただし、某と見八は許我(こが)での一件でお尋ね者となってしまったので、法師殿の見送りは小文吾と狭がしていた。
「狭子殿を宜しく頼みます…か」
「?どうした、信乃?」
「…いや」
古那屋の入り口付近にいた某に、現八が声をかけてくる。
我ら3人は、法師殿から託されたという事もあり、狭子と行動を共にする事となる。今まで女子(おなご)を連れての旅をした事がなかったので、この先はどうなるかと考えていた。
浜路(はまじ)…。息災であろうか…
それと同時に、故郷である大塚村に残してきた許婚・浜路の事を考えていた。おそらく、狭の顔があの娘と瓜二つ故に思ったのかもしれない。
「ん…?」
気がつくと、現八が深刻そうな表情をしながら、周囲を見渡している。
「現八…どうしたの?」
見送りから戻ってきた狭が現八を見て、不意に声をかける。
「…お主か」
狭の存在に気がついた彼は、我に変えったような表情で口を開く。
「何やら、誰かに見張られているような気がしたのだが…。どうやら、気のせいのようじゃな」
フッと横目を向いた現八だったが、すぐにいつもの表情に戻った。
「相変わらず、お主は仏頂面のままじゃのう!少しは信乃を見習ったらどうだ?」
「…余計なお世話だ」
何事もなかったような顔で話す小文吾の台詞に、少し不快だったのかそっぽを向いてしまう現八。
そんな彼らに複雑そうな笑顔を見せる狭。それでも、某にとっては一時の安らぎともいえる時間であった。しかし、この時に現八が感じ取っていた気配の正体を、この後の旅で知ることとなるのであった――――――――――
「あれは…!?」
この台詞を某が口にしたとき、視界に入ってきた光景に驚いていた。
己に義兄弟であり、4人目の犬士・犬川荘助義任(いぬかわそうすけよしとう)を迎えるために大塚村付近へ我々は向かった。
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