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「なんか悪かったな。去年までのスタッフは、真に受けて作ってくる奴なんかいなかったから、かえって気を使わせちまったな」
最後の後片付けも終わって、他のスタッフが帰った後、私も帰ろうとコートを着てる時にボソッと鞍馬さんが呟いた
「とんでもない!逆に私なんかの手作りを食べて貰って気を使わせたんじゃないかと心配なくらいです!」
鞍馬さんの作ってくれたチョコレートケーキは本当に美味しかった。ナイフを入れるのももったいないくらいの鏡のように艶のある表面に、シンプルな飾り付け。中はチョコレートのスポンジとクリームが何層にも重なってしっとりしていて、クリームと一緒に挟み込まれたラズベリーの酸っぱさが舌を飽きさせないで、ホールで食べれると思ったくらい
「鞍馬さんのケーキがあれば、私のなんていらなかったですね」
「お前、本気で言ってんの?」
呆れたような鞍馬さんの声
「俺のケーキは確かに美味い。だけど、先に無くなったのはシロちゃんのブラウニーだぜ?」
「それは、口直しのために鞍馬さんのケーキを取っておいたんじゃ……」
「バーカ。バレンタインに野郎の作ったケーキが女の子の作ったブラウニーに勝てるかよ。ま、いずれは勝つつもりでは居るけど、女の子の気持ちのこもったプレゼントは最強なんだよ」
ありがとな。なんて笑顔で頭を撫でられたら、どんな顔して良いか分かんない
時計は0時を越えて、バレンタインは終わってしまった
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