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「おはよう雷蔵」
「…えっと。…ごめん、誰だっけ?」
「私?私は鉢屋三郎。お噂はかねがね、一年C組図書委員の不破雷蔵くん?」
にっと口角を引き上げる笑みにはとても見覚えがあった気がした。
懐かしい。喜ばしい。
いきなり呼び捨てにされたことすら、当然で必然だと感じてしまうほど、僕の彼への警戒心やらは吹き飛んでしまうほどだった。
噂とは何だいと聞くと、彼は人差し指をピンと立てて自分と僕とを交互に指差した。
人に指を差してはいけないんだぞと言ってやりたかったが、さすがに親しいわけでもない相手に言うのは憚られた。
目の前にある桜色の爪がついた指先と彼の顔を見比べた。しばらく考えていたが分からない。降参の意を示すと、彼はくすくすと笑って自分の頬をふにっと突いた。
「私と君は顔立ちが似ている」
「嘘?」
「実を言うと私も半信半疑だったのだけどね、…百聞は一見に如かず、だね。鏡をご覧よ」
彼はポケットから小さな鏡を取り出して僕のほうに向けた。
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