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ホームルームも終わって、僕はいそいで身支度を整え鞄を掴んだ。
今日はもうさっさと帰ってベッドにダイブしたい気持ちだった。
休み時間の彼のことが頭から離れず、授業なんてろくに聞いていなかった。
今日の僕は変だ!おかしい!
奇声をあげてしまいそうになるのをどうにかこらえて、僕は教室を飛び出した。
「おや雷蔵、もう帰るのかい?」
「──ッな…!?」
「早いね。私のクラスはホームルームをすっとばすけど、雷蔵のクラスもそうなのかい?」
にっこりと笑って立っていたのは、僕の半日を狂わせた彼だった。
彼もすっかり帰り支度を済ませていて、口振りから察するに誰かを待っていたようだ。
「雷蔵?」
「君、誰か待ってるの?」
大方予想というか確信はあったけれど、何食わぬ顔をしつらえて聞いてみた。
すると案の定、彼は嬉しそうに顔をほころばせて答えた。
「うん、君を待っていたんだ。一緒に帰らない?」
「いいけど…鉢屋くん家どこ?」
「さあ帰ろう!」
あからさまにはぐらかして、彼は僕の左手を掴んで歩き出した。
いやだからさ、君ちょっと馴れ馴れしすぎやしないかい?とはやっぱり言えなくて、彼の手のひらがあったかくて僕よりも少し大きいのがとても懐かしく感じた。心がしっとりと濡れていくようだった。
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