0人が本棚に入れています
本棚に追加
気がつけば私はスーパーに居た。
いつも買い物で来る見慣れてたスーパー。
そこの乳製品コーナーで佇んでいた。
周りを見ると買い物をしている主婦、サラリーマン、小学生くらいの子供。
普通に思える光景でも、そこに違和感があった。
夕方でもないのにスーツを着たサラリーマンがいて、お母さんと一緒に買い物をしていてもおかしくないのに、子供たちは大人から離れて買い物をしている。
みんな個人個人で買い物をしていた。
私はどうしてここにいるんだろう?
思い出せなかった。
このスーパーは家の近くにあって、よくお母さんと買い物に来たことはあるけど、今日このスーパーへ行った記憶がない。
ピンポンパンポーン♪
そんな時に、聞きなれた音楽で店内放送が流れた。聞こえてきた声は男の人だった。
『本日はご来店いただきまして、ありがとうございます。当店にお越しの皆様にお知らせです。
5時間後にゲームを開催いたしますので、それまでに自分に必要だと思うもの全てを、買い揃えていただきます。お金は全額こちらが負担いたさますので、お客さまは何も気にせず自由に好きなお買い物をお楽しみくださいませ。
なお、あれもこれもと買いすぎますと身動きがとれなくなりますので、効率良くお買い求めください。』
そう言って音楽を鳴らし、放送が切れた。
あの放送にはいろいろと気になる言葉を発していた。
まず、5時間後に始まるゲーム。
次に、そのゲームに備えて必要なものを買い揃えておくこと。
そして、買いすぎると身動きがとれなくなる。
ゲームって何?どうしてそんなものに参加しなきゃならないの?
しかも、いろんなものを買い揃えないといけない大がかりなものみたいだし。でも買いすぎるとダメなんて…
何をどのくらい買えばいいのかが全然分からなかった。
そもそも自分がどうしてここにいるのかも分からないのに…
放送を聞いた周りの人たちは目の色が変わったようにカートを持ち、カゴへ賞品を入れていく。
大人も子供も。男も女も。
主婦はお肉や野菜なんかを、子供はお菓子やパン。サラリーマンはビールや串や雑誌なんかを。
カート1つじゃ足りないのか2台めのカートを引っ張ってくる人もいた。
みんな何かに取りつかれたかのように、黙々と買い物をしていた。
5時間後に開催するゲーム向けて。
最初のコメントを投稿しよう!