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「原田、夜練をするのは構わないが、その時間帯なら保護者付きじゃないと練習できないよ」
「え? あっ、そうか……」
優太が佐川に指摘される様子を見ていて真二は感づいた。
嵜垣中の学生は夜8時以降は保護者同伴でないと外へ出てはいけないという規則があるのだ。
夜8時から公民館で練習となると当然保護者同伴でないと認められるわけがない。
そして夜練は毎日行う予定のようだが、保護者たちが毎日練習に付き合ってくれるとはとても思えない。
この夜練は不可能かと思われたそのとき、優太はくすりと笑みを浮かべた。
「先生、でもその規則は自分の親でないといけないという訳じゃありませんよね?」
「む? ふむ。まあ大人が誰か1人でもついておれば大丈夫じゃが……」
優太に返答している最中に佐川はハッと気付いた。
優太も自分が言わんとすることに佐川が気付いたことを察したようで何かを頼むように頭を下げた。
「先生。お忙しいところ申し訳ありませんが平日の夜練に保護者として付き合っていただけませんでしょうか?」
「……むう。全国制覇をするためにはやむを得ないか。分かったよ。わしが保護者として練習に付き合おう」
優太の頼みに思いの外、早く承諾した佐川。
おそらく初めからそのつもりだったのだろう。
ともあれ、佐川のおかげで夜練は無事に行われそうだ。
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