全国制覇

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「……なあ、真二。お前と光成は正真正銘の兄弟なのか?」  光成が立ち去った後、橙太はずっと気になっていた疑問を真二へぶつけた。  真二と出会ってもうすぐ2年の月日が経とうとしていたが、真二に兄がしかも白龍中で卓球をしていたなど今まで一度も耳にしたことはない。 「……うん。荒川 光成は正真正銘、俺の双子の兄だ」  本当に兄弟だったのか、と橙太は真二の返答を聞いて納得した。 「それにしても真二のお兄さん、凄く強かったね。はっきり言ってあんなに強い人は見たことがないよ。お兄さんは昔から卓球をしていたのかい?」  優太は今、この場にいる誰もが気にかかっていた事を尋ねた。  光成は強かった。  光成の動き自体も今まで見たことがないような速さであったが、何よりも一番の驚きは彼の打球である。  光成の打球は単刀直入に言うと、速くて重い。  その速さは目で追いかけられない程で、重さはもはや鉛玉を打っているようなものだ。  それほどの打球を放てるのだから、だいぶ昔から卓球をしていたに違いない。  優太たち全員がそう思っていたが、真二の返答はそれとは違っていた。 「いや、俺は兄さんが卓球をしているところを見たのは今が初めてだ。少なくとも小学6年生の頃までは卓球をしていなかった」  その言葉に周囲の人間全員が驚愕した。  真二の言葉が本当だとすると光成が卓球を始めたのは中学生になってから。  そうなると、光成は卓球を始めてわずか2年近くであの打球とスピードを身につけ、全国トップクラスの白龍中でエースになったことになる。  普通ではありえないことを成し得た光成は、まさしく『天才』。  光成ほどその言葉が似合う男は居ないであろう。
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