全国制覇

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「それはそうと真二。お前は白龍中と試合した時、光成の事は何も喋っていなかった。お前は光成が白龍中に居たことも知らなかったのか?」 「うん。白龍中どころか大分に行ったことも知らなかったよ。俺には何も言わずに行ったし、両親にも口止めさせていたみたいだし……」  達也が真二に尋ねてみたら、その返答は衝撃的だった。  光成は双子の弟に何も伝えずにむしろ事情を知る者に口止めすらさせていたのだ。 「お前に伝えないどころか親にも口止めさせるなんて……何か深い事情があったんじゃないか?」 「いや、それはないよ」  ゴクリと固唾を呑む橙太の言葉を即否定する真二。  皆がその答えに呆気にとられる中、真二は言葉を続けた。 「あの馬鹿兄さんの事だから、どうせ何も言わずに行った方がカッコいいと思ったんでしょ?」  そんな馬鹿な理由でと全員が考えたが、光成の「道場破り」宣言や人懐っこい笑みを思い出して、あいつならあり得ると考えを改めた。 「えっと、真二。君はお兄さんの心配はしなかったのかい?」 「えっ? いや、全く全然」  優太の質問にまたもや即答で否定する真二。  なぜ優太はこんなことを聞くのかと言いたそうな表情を見せる真二を見て、真二と光成は結構仲の良い兄弟だと部員全員は思い始めていた。
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