願掛け

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俺を一発殴ったあと、すぐに二発目を繰り出そうとする両手を慌てて掴む 躍起になって暴れる土方の隙を見て体をすり替えた 形勢逆転 『んだよ、やんねぇぞ』 ふぃっと横を向いた土方は本当にそんな気分じゃなさそうだ なんとなく握っていた手の甲にキスをひとつ 土方は横を向いたまま動かない 『…なんでそんな嫌がんだよ』 『テメェこそなんでそんなにこだわんだ』 『あ?』 『大体見廻りする報告は要らねぇのに討ち入りする時は言えなんて変だろうが。同じ仕事じゃねぇか』 『いやいやおまえ、危険度けっこう違くね?』 『言っとくけど夜の見廻り中に闇討ちとかけっこうあるからな』 『………』 土方はようやくこちらを見た 握っていた手はそっと離され髪を掻き揚げる 『俺はどんな仕事中でも気を抜いたりしない』 ゆっくり上体を起こした土方の顔が少し近づいた 『今後も俺がおまえに遺言預ける事はねぇ。俺にとっちゃ討ち入りも見廻りも同じ仕事だからな』 お前ばかじゃねぇの どこが見廻りも討ち入りも同じ仕事なんだよ 俺だって遺言なんていらねぇよ 持ってきたってお断りだ そうじゃなくて お前が命賭けてる時に俺は… 『空っぽの頭で難しいこと考えてんじゃねぇよ』 『イデデ、抜ける抜ける』 土方の手によって俺の自慢のテンパが俺から離れていこうとしている 『テメェはこうやって黙って俺の帰り待ってりゃいいんだよ』 ムカつくほど男前な顔でそう言い放った土方になにもかもがどうでもよくなって抱きついた俺は、初めて乙女心を知った
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