21人が本棚に入れています
本棚に追加
…コォォォン!!タンッタンッ!!キィッ!キュアア…
ダークグレーのインプレッサが不格好ながらにテールをスライドさせ、南賀知山(ナカチヤマ)を上って行く。
シューーーーゥン!!バンッバンッ!!
排気管が火を吹き、加速を促す。
「今のスライド…結構グラついてたな?」
ナビシートで呟く大貴。
「うっせぇなぁ。ようやくこの車に慣れてきたばかりなんだ。上手く流せるまでまだまだ掛かるさ。」
「てか、お前の方はどうなんだよ。あのターボのジャンク乗りこなせてんのかよ。」
ここぞとばかりに攻め入る。
「今、それ聞くか…?」
「つかジャンクとは聞き捨てならんな、頭金だけで買えたチューンかーがあれしかなかったんだ。俺が金無いことは知ってるだろうが。」
少し落ち込んだ様子で続ける。
「そういえばこの前ここら辺りでテール擦ったんだよなぁ…。」
擦ったと思われる黒色の塗料が付いたガードレールを横目に大貴は更に落ち込む。だがそこのコーナーはそれほどRもキツくなく、ちゃんとブレーキングしてから進入すれば簡単に抜けられるコーナーだった。
「…んで?バンパー直したか?」
ハンドル片手に指で肩を突く。
「いんや。今金なくて、それどころじゃねぇよ…。Rに悪いけどしばらく凹んだままだ。」
軽くうなだれ、疲れた様子で語る。
「ははん。どおりで俺のクルマに乗せろとか言う訳だ。バトル観戦にバンパー擦ったクルマで行くのはカッコ付かないよな(笑)」
クスクス笑いながらアクセルを踏み込んでゆく。
「ったく…そんなに笑うなよなぁ。傷付くぜ。」
そんな事を言いながらナビシートでカーステを弄りはじめた。
「~♪~♪」
ボリュームを上げると、俺の好きな曲が流れた。
「…お前も好きだよな。その曲。」
中学の頃から擦り切れる程聞いてたCDを未だに車に詰んでる辺り、俺も相当な物好きなのだろう。
「ん?…おいおい、前から二台の対向車来てるぞ!!」
音楽に聴き入っていて気づかなかったが、どうやらアタック中の走り屋みたいだ。
最初のコメントを投稿しよう!