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「今夜こそ…今夜こそはあの蒼いFC来るか…?」
大貴は軽く呆れながらため息を吐いて呟く。
そう、あれからもう一週間もこの峠に通ってはこの山頂パーキングで大貴を連れ、コーヒーを啜る日々を繰り返していたのだ。
だが、あのFCは未だ姿を表さず…。
「やっぱりもう来ないだろ。この前の紅きペルセウスとのアタックでここいらの走り屋全部撃墜されちまったみたいだぜ?」
ンクッ、ンクッ。
「…ふー。確かにそうかもな…。」
缶コーヒー片手につまらなそうに立ち尽くす。
ザワザワザワ…
突然ギャラリーがざわつき始めた。
「おい…下から上がってくるあの蒼いクルマ…あのFCじゃないか!?」
ギャラリーの何人かが騒いでいる。
「お出ましのようだぜ。薫。」
大貴は呆れたように笑って、片手に持っていた空き缶をゴミ箱に投げ捨てる。
「でも、何の目的があって来たんだ?」
すこし首をかしげながら続けた。
「もうアイツに勝てるような凄腕はいないし来る意味なんかないじゃないか。」
ウォーーーーン!!コシュウ!!ウォーーーー!!鋭いエキゾーストたぎらせ、奴はこの山頂パーキングへ滑り込んできた。
キュイイイイ!!ウォン…ウォン…!!…ォォォォ…
アイドリングをしたまま微動だにしないFC。
静寂に包まれる山頂パーキング。
「ん?パーキングに停まったてのに降りて来ない?」
首を傾げる大貴。
しびれを切らしたように薫が
「…?少し気になるな…声かけてみよう。」
そう言ってズカズカと歩み寄る。
焦ったように大貴が
「あ、おい!!すごい化けもんみたいの出てきたらどーすんだよ!?」
澄み切ったミッドナイトブルー、その夜空の様な蒼…。
雨宮仕様のエアロボンネットに埋め込まれたヘッドライト…。
しなやなサイドスカートの掘り…
まるで後ろを追うものを威嚇するえげつない程飛び出たウィングに大型ツインマフラーを讃えるリアディフューザー。
その圧倒的な存在感と風貌は正しく蒼き狼…。
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