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私の心の片隅に、常にいつもある小さな闇が 兄だった。両親も、もう高齢。何かあった時、兄はどう生きていくつもりなのか。兄に対してイライラする気持ちがあったけど、両親に対しても納得いかない気持ちがあった。 なぜ、強く言えないのか? 家を追い出して、独り暮らしをさせれば、 自ずと働くのではないか? エサを与えるのではなく、 エサの取り方を教えないと、 兄の将来の為にはならないのではないか? でも、私は家を出たときから徐々に 部外者のようになっていっていたし、 子供を育てたこともない私が言うことでも ない。 無職だとしても、人様に迷惑さえかけなければ 良いかと、自分の中のモヤモヤに折り合いをつけていた。 兄の話になった時の、両親のつらそうな顔を 見るのも嫌になっていた。 私が家を出たあたりには既にうっすら痴呆が始まり、実家へ帰る度に私の事を忘れていく祖母が、亡くなった。 介護施設を行き来している話は聞いていたが、 葬儀で久々に実家に泊まった時、祖母の部屋はすっかり介護仕様になっていた。 私の記憶の中の祖母は、自分で歩けていたし、食事も出来ていたのに。 もっと、祖母に会いに帰ってくればよかった。
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