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父は定年を過ぎてもずっと働き続けている。
聞けば、清掃の仕事で、原付バイクで通っているらしい。心配でしょうがない。
父は回りの言うことを聞かない性格である。
何を言っても『俺は大丈夫だ』の繰り返し。
父は仕事が好きで、体を動かしているのが好きだから、自分の意思で働いているのはわかる。
でも、趣味のような気持ちで働くのと、3人の家計を背負って働くのとでは、疲労も心労も違うのではないか。
無理して、働くのが好きなフリを続けているのではないか。
どうしてそこを汲み取れず、兄は働こうとしないのか。
どういう気持ちでその姿を見ているのか?
せめて、車で送り迎えだけでもしようと思わないのか?
私は、たまりかねて兄に電話して、いよいよ核心に触れる話をした。
「お兄ちゃんはもう、働く気はないの?」
『……そんなことはないけど』
「高齢の父親が、清掃の仕事して、しかもバイクで通っていて、心配じゃないの?車で送迎するとかさ……」
『俺は何度も言ってるよ!!危ないから送るって!でも俺の運転の方が怖いし、大丈夫だって、聞かないんだよ!』
私の言葉を遮るように突然、声を荒げた。
『実家にいる時もほとんど家いなくて、出ていったあとも何もしてこなかった何も知らないお前に、とやかく言われる筋合いはない!』
「………わかった、もういいや。じゃあね」
『じゃあな!』
ガチャンと叩きつけるようすが浮かぶ感じで電話は切られた。
兄妹の仲は更に険悪になってしまった。
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