花屋の娘

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「お待たせしました。 薄オレンジの薔薇です」 「あ、ありがとうございます」 薄オレンジの薔薇は優しく愛しそうに抱く奈々の手から日溜まりのように優しい昌也の手へと渡る。 端から見ればカップルのように見えてしまうその2人の雰囲気は直子にしてみれば面白くはないけれど、昌也の笑顔を潰したくはないのか、一途な直子の思いがその衝動を押さえつけた。 爽やかな雰囲気を感じ取った奈々はふと、あることを思い出した。 「昌也さんは知ってますか?薄オレンジの薔薇の花言葉。『爽やか』なんですよ」 「へぇ…。 花言葉とか知らないので勉強になります。さすが花屋さん」 「爽やか…なんて、まるで昌也さんそのものですね」 「そんな、とんでもないです! ありがとうございます、奈々さん」 優しく微笑む彼女こそが爽やかなのではないかと思いつつ、照れくさそうに素直にお礼を言うと、奈々はさらに笑顔になった。
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