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「なんかさ、田舎の高校が出てるって思ったら思わず見入っちゃった」
「・・・オレも」
「元気・・・だったか?」
「ん・・・なんとかね 久遠くんは?」
亜弥は、少し目をふせた
「まぁまぁって感じ」
「久遠くん、少し雰囲気変わったかも」
「え・・・じじくさくなったかもな」
「ううん・・・そうじゃなくて、なんていうか大人っぽくなったっていうか・・・」
「・・・あのな、42歳にもなってガキっぽかったら、ちょっと残念な感じだぞ」
「・・・クスッ・・・そうかもね、そういうとこは中学の頃から変わってないね・・・あっ!もう行かないと・・・」
亜弥はとたんにせわしなくアタフタしだす。
オレが今来た道の方向にもう歩き出してる。
「じゃ・・・ね 久遠くん」
「あ・・・あぁ」
亜弥は早足に一度も振り返ることなく駅に向かって行った。
ガチャ
昼間のねっとりした暑さが残る2DKの部屋。
空気を入れ換えるために窓を開けて、外の暑さを忘れていたことを後悔する。
すぐに窓を閉めて、エアコンのスイッチを入れる。
熱風と冷風の入り交じった不快な風が無機質にはきだされる。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取りだし一口飲んでその冷たさが体の隅々まで行き渡り、今まで夢うつつだった感覚が元に引き戻されていく・・・。
亜弥だったよなぁ。
確かに亜弥だった。
髪型は昔より少し長めだったけどショートの部類。
淡い色のワンピースに薄手のショールを羽織ってた。
・・・オレは亜弥にどう映ったんだろう。
くたびれた中年のサラリーマン。
24年前から考えると、20キロは太ったし。
あいつ、よくオレってわかったな・・・。
そのときは、「亜弥はスゲーな」くらいにしか思わなかった。
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