秋の・・・

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・・・嵐のような出来事から2日。 なかなか亜弥に電話する踏ん切りがつかず、どうしようかと携帯を見つめる時間が多くなっていた。 ・・・だってそうだろ。 40を越えた大の男が、結婚してる女の人においそれと電話なんか出来ない。 守りに入った人間の独特の理論を自分に言い聞かせ、電話しない理由に自分で納得しようとしていた。 ・・・そして、また1日が終わる・・・はずだった。 いつも通りの家路、どうしようかな・・・リンゴの樹でカレー食べて帰るか・・・いや待て。亜弥の旦那がいる可能性があるか・・・なんて思ったけど、よく考えたら亜弥の旦那はオレを知らないんだった。 なぜかホッとしたら急に空腹感を覚え、店に入り一目散にいつもの席に向かった。 ・・・座られてる。 仕方ない。今日は別なとこに座るしかないな。 ま・・・カレーが食べられればいいや。 ってカウンターの止まり木に座ろうとしたら・・・。 「 久遠くん」 「・・・はい?」 右京さんみたい。 あれ?亜弥の旦那じゃなくて亜弥だ。 これは困った・・・。 いや、別に困らないか。 腕をとられ、オレのいつもの指定席連れていかれて、座った。 先に座っていたのは亜弥だったのか!この状況なら当たり前のことに納得する。「どういうことよ?」 「・・・えっ どういうことよ・・・とは?」 「なんで電話くれないのよ。電話してって言ったでしょ。まさか電話番号書いた紙なくした?」 「いや、あるよ」 「じゃ なんで電話くれないのよ」 (なんか、この前からずっと圧倒されっぱなしだな…ちょっと冷静になろう。 オレは自分に言い聞かせた) 「柴咲・・・ちょっと待て。いいか、落ち着いてよく考えろ。 オレたちも、もう42歳だ。分別ある大人だ。 そりゃ確かに、たかが電話かもしれない。 でも旦那はどう思うんだ?オレだってお前と話はしたいけど、一応 社会人としてのモラルはあるつもりだし・・・」 「ちょっといい?」 途中で話を遮られ、 なぜか、先程までの勢いだけの亜弥ではなく、落ち着き払った学校の先生を連想させる。 「・・・はい。どうぞ」 「久遠くん、この前私が言った言葉信じてくれてないの?・・・あんなバタバタな感じで言ってすぐに帰っちゃったけど、ものすごく恥ずかしかったんだから・・・。 42にもなってって思うけど、もう後悔だけはしたくなかったから・・・」 カランとコップの水の中の氷が形を変えて沈んだ。 そのとき、急に亜弥は「あ!!・・・」と言ったきり亜弥は下を向いてしまった。
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