秋の・・・

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・・・確かに奈美には借りがある。 借りという言葉は、厳密には語弊があるか…。 あの噂が流れたとき、奈美にきちんと説明をすれば済んだことだったかもしれない。 オレの初恋は亜弥だ。 でも、亜弥はオレが亜弥のことを好きだったことは知らない。 当時亜弥の親友をオレが好きだって噂が流れたから・・・。 その亜弥の親友が・・・奈美だった。 忘れもしない、中学の修学旅行。 ディズニーランドが開業したばかりで、3年生にアンケートをとった結果、ディズニーランドに決まった。安直な感じだけど・・・。 その旅行中、ある出来事が起こる。 そもそもオレが奈美のことを好きだって噂が流れたのか・・・そのときは深く考えなかったけど・・・。 そう言われてみれば、思い当たる節もある。 「恭一、5組の相原奈美のことどう思う?」ってクラスメイトの佐藤直也に聞かれたことがあった。なんの気無しに、「あ~あのおとなしい感じの可愛い子のこと?」なんて答えたもんだから、直也の人間拡声器+味の素の素養が加味されて┅概ねこれが情報の根っこだろうと思うけれど・・・あっと言う間の展開だった。 そんな噂が奈美本人の耳に入れば、そりゃ良い気持ちはしない・・・多分。 誰でも1回くらい経験してると思うけど、中学生や、高校生の頃なんて「恭一のやつ、○○のことが、好きらしい」なんて根も葉もない噂は、たてられるもんだ┅多分。 好きでもない奴と噂がたてられて、回りから、からかわれたら、そりゃいい気はしない。 まぁその辺は本人じゃないのでわからないが、おおよそ当たりだと思う。 ・・・で、その裏付けとなった出来事が・・・。 修学旅行も第一日目を終わり、みんなが一番わくわくする夜、女の子の部屋に行って騒ごうとしたり、ゲームしたり、お決まりのプロレスごっこからケンカに発展したり、そんなザワついてる中で直也が、「奈美が呼んでるよ」と囁く。 「オレをか?」 「うん」 なんか決まり悪そうに頭を掻きながら直也は言った。 「ロビーの自販機の横にいるって」 「・・・わかった」 その様子を純も見ていて 「恭、行くのか?」 「仕方ないよ。誤解はといてくる」 「そうだな、そのほうがいい」 「あぁ・・・んじゃ、ちょっくら行ってくるわ」 奈美はロビーの自販機の陰に立っていた。 「相原・・・?」 「・・・でくれる!」 「はぃ?」 「からかわないでくれる!」 「えっ・・・」 「それだけだから」 パタパタとスリッパの音が遠ざかっていく・・・。 ・・・呆然と立ち尽くした。自販機が無機質に電気の切り替えか、缶を冷やすためか、ジージーって鳴いている。 修学旅行の思い出が自販機の音って如何なもんか・・・。 そんなことがあった・・・。
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