秋の・・・

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・・・来てほしくない土曜日。 神楽坂で待ち合わせ。 なぜ神楽坂なのか理由は知らない。 奈美が来たかったんだろうな。 昭和の雰囲気の残った落ち着いた感じの喫茶店に入った。テーブルも椅子も木の素材をそのまま使ったような古さがカッコイイみたいな感じ。 奈美はダージリンをオレはブレンドを頼み、弾まない雰囲気の中で一口飲んだ。 「うまい!」 思わず言っちゃった。 「・・・でしょ。久遠くんコーヒー好きだって聞いたから、美味しいって評判の店探したの」 ・・・でも、ホントに美味しかった。酸味も苦味もバランスよく、なんか一本取られた感じだったけど、誰にオレのコーヒー好きなんて話しを聞いたのか、誰にオレの携帯の番号を聞いたのか、そっちの方が、気になった。 「誰がそんなこと言ってたんだ?」 「・・・ん?それは内緒」 奈美は42歳にしては若く見える。今は中学時代のおとなしいイメージないけど・・・。 なんか間が辛くなってきたので、どうしようか考えていたら、口火を切ったのはやはり奈美だった。 「?マークが顔中に付いてるよ」 「そりゃそうだろ」 「私、今ね、介護の仕事してるの・・・結構へこむこと多くてさ、もう10年くらいやってるのにだよ」 ・・・意外だった。奈美の外見から介護の仕事は想像つかなかった。もっと華やかな、セレブな仕事や生活をイメージしてたオレは、なんか悪いことをしたみたいに目を伏せた。 「2年くらい前かな、仕事がうまくいかなくて、もう辞めようかなって本気で考えて、亜弥に相談したんだ」 亜弥・・・? 奈美は亜弥の親友だ。 ずっと、途切れず繋がっているんだな。 「そしたら、亜弥、自分の仕事もあるのに、一緒に仕事先を回ってくれたの。」 「仕事先・・・?」 「私の勤め先の介護事務所に登録してるおじいさんやおばあさんの家へ、お世話をするために訪問介護しに一緒に付き合ってくれたの。そしたら、亜弥・・・『奈美の仕事は人を幸せにする仕事なんだね』って」 オレは何て言っていいか言葉が見つからなかった。 「私、はっとしたの・・・亜弥が『奈美、気付いてる?おじいさんやおばあさんが奈美がお世話を終えて帰るときものすごく良い笑顔でありがとう、また来てねってみんな言ってくれてること・・・奈美の仕事って大変だけど、元気がでるね』って」 確かに亜弥はそういう子だった。 友達が困っていたら、自分より友達を優先する。
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