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(えっ!どういうこと?どういう意味?)
意識過剰に軽くパニック・・・。
「ごめん、ボーとしてた、もう一回言って」
「テレビ見てたんだよって言ったの」
オレの行ってた高校には、もともと野球部がなく、成り行きで野球部をオレが立ち上げた。夏の甲子園出場をかけた県予選に初出場する高校が、その年はオレの高校だけだったので、地方のテレビ局全てと、新聞各社からの取材を大会前から負けるまで受けた。
当時音信不通だった人達から、たくさん連絡がきたことはマスコミの影響力と共によく覚えてる。
たった半年くらい前の話だけど、もうずいぶん昔のことに感じられる。
(見ててくれたんだ・・・)
素直にうれしかった。
「あ・・・ありがと」
「でも、ほんとに惜しかったね」
「うん、でも、もうそれはいいんだ」
亜弥は、ちらっとこっちを見てすぐに下を向いた。
「そっか・・・」
「柴咲・・・」
「・・・ん?」
その瞬間・・・ガタンガタン・・・電車がきた。
「・・・元気でな」
「久遠君も・・・」
我ながらほんっと意気地がないというか、なんというか・・・。
同じ電車に亜弥と乗り込んだのだが、お互いの友達がいたため、亜弥とはそこで別れた。オレと亜弥が一緒にいるところを友達に見られ、あの可愛い子は誰だ‼とか、なぜお前と親しげに話してたのか・・・とか矢継ぎ早に質問されたけど、自分の不甲斐なさに答える気にもならなかった。
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