第一章【東京】

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屋上に出ると、千切れ雲の漂う青空が目に飛び込んできた。 気温は高いが、吹き抜ける風が涼しくて心地良い。 屋上全体に目を走らせると、中央らへんの西側フェンスの前に立って外を眺めている女子生徒の姿が目に入った。 短めのスカートのセーラー服で、艶のある長い黒髪が風になびいている。 確かにその後ろ姿は、毎日クラスで見かける天草のもののようだ。 とりあえず彼女の二メートル後方まで近付いてみたが、何と声をかけていいのか分からず、色々と考えていたら、彼女がこちらに背を向けたまま突然尋ねてきた。 「……如月君?」 「え? あぁ」 「そう、来てくれてありがとう」 洒落た切り返しが思いつかなかったので、普通に返す事にする。 「どういたしまして」 「ねぇ、昨日のニュース見た?」
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