第一章【東京】

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「……今までで一番良かった死に方は?」 「それは最も誰にも迷惑かけなかった死に方?それとも僕的に良いと思ったヤツ?」 「あなた的に」 「……二ヶ月くらい前の飛び込み自殺かな。若いOLだったっけ」 「あら、人身事故なんて珍しくもないんじゃない?」 「普通ならね。でも、あの人は……」 「……普通じゃなかったのね?」 「……電車がホームに入ってきて、飛び込む直前にさ、振り返って後ろにいた僕を見て笑ったんだ。そして笑いながら線路に消えた。足元まで飛び散ってきた血や肉片が今でも忘れられない」 「……」 天草は無表情のままじっと僕を見つめている。 責めるでもなく。 哀れむでもなく。 ただ何かを想うように。
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