第一章【東京】

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僕は少し自嘲的な笑みを浮かべて見つめ返した。 「なんだか……嬉しいようで、悲しいような……そんな笑顔だった」 「……そう」 天草は僕から視線を外して再びフェンスの向こうに向けた。 そのまま僕らは互いに少しの間、何も言わなかった。 涼しい風が頬を撫でていく。 まだ四時過ぎの空は青く広く、ひぐらしの鳴き声が辺りに満ちている。 太陽の光が家々に反射して、街の景色を美しく輝かせいた。 しばらくして、天草が口を開いた。 「デパートの屋上で見た時から、あなたはそういう人だと思ってたわ。予想通りで良かった」 「ただの死体好きだとは思わなかったの?」 「それなら靴を眺めるより、すぐにでも死体を見ようとするでしょう」 ごもっともだ。 天草がクスリと笑い、僕も苦笑した。
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