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僕は少し自嘲的な笑みを浮かべて見つめ返した。
「なんだか……嬉しいようで、悲しいような……そんな笑顔だった」
「……そう」
天草は僕から視線を外して再びフェンスの向こうに向けた。
そのまま僕らは互いに少しの間、何も言わなかった。
涼しい風が頬を撫でていく。
まだ四時過ぎの空は青く広く、ひぐらしの鳴き声が辺りに満ちている。
太陽の光が家々に反射して、街の景色を美しく輝かせいた。
しばらくして、天草が口を開いた。
「デパートの屋上で見た時から、あなたはそういう人だと思ってたわ。予想通りで良かった」
「ただの死体好きだとは思わなかったの?」
「それなら靴を眺めるより、すぐにでも死体を見ようとするでしょう」
ごもっともだ。
天草がクスリと笑い、僕も苦笑した。
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