第一章【東京】

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月曜とはいえ、昼休みになる頃にはさすがに普段のテンションが教室に戻っていた。 僕もいつも通り、仲の良い連中と昼飯を食べていたら、不意にその中の一人が話を振ってきた。 「そういやさー、お前昨日のアレ見た? ニュース」 「なんのだよ?」 「なんのって! お前、昨日のアレっつったらアレしかねーだろ?」 「いや、確実にそれ以外もあると思うけど……巨人の試合?」 「なわけねーだろ! アレだよ、アレ!新宿の、」 瞬間、赤いポロシャツと揃えられたハイヒールがフラッシュバックした。 「飛び降り自殺!」 蒼い空を流れる雲。 揺れる黒髪。 喧騒に染まる空気。 「……あぁ、あれか」 「かなり巻き添え喰ったらしいぜ、アレ! ったく、死ぬなら一人で死ねよなー!」 「あ、それ見た!」 他の奴らも会話に入ってくる。 「ヤバくね? アレ!」 「ヘリからの映像でさ、屋上んとこにハイヒールが揃えて置いてあって、なんかスゲー気味悪りーの!」 「デパートもいい迷惑だよなー!」
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