第一章【東京】

6/49
前へ
/237ページ
次へ
「まあ、いいけどよー。そういや、もうすぐ夏休みだなー」 谷川は、空いていた僕の前の席に移動して窓の外に目をやりながら話題を変えた。 僕の席は一番窓側の列の真ん中くらいで、左を向けばすぐ外の景色が見えた。 「そうだなー」 言われて窓の外に目を向ける。 東京ではあるが都心から離れているため、この高校のまわりには結構、自然が残っていた。 目に飛び込んでくる緑の木々、 もう鳴き始めている蝉の声、 教室にかかっている冷房が、 もうすぐ八月だという事を実感させる。 グループの奴らが今度は好きな芸能人の話題で盛り上がっているのを聞きながら、しばらく僕らは黙って夏の景色を眺めていた。 その後、またグループの会話に参加させられて、いつものように馬鹿話に花を咲かせながら昼休みは過ぎていった。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

585人が本棚に入れています
本棚に追加