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「それよりさ、ね、ね」
ゆりは身を乗り出してあたしの顔を覗き込む。
輝きに満ちたその瞳にまったく心当たりがなくて、ぱちぱち……と何度も瞬きをした。
するとゆりは「ああ、もう……」とじれったそうな声を出し、バッグの中からがさごそと何かを取り出した。
ハガキだ。
「なに? これ……」
「華緒梨、本気で忘れてるの!? 酷くない!?」
「……なんだっけ?」
てへ、と首を傾げると、ゆりの瞳からすっと輝きが消え失せ、わずかな怒りが揺らめいた。
「その、興味のないことすぐ聞き流す癖! 直さないと、嫌われるわよっ!」
まったくもう、とブツブツ言いながらゆりはさっと手首を返し、ハガキをバッグにしまった。
ちゃんと見せてくれる気がないのなら、わざわざ出さなくたって……。
「ハンカチの君のことは忘れないくせに。華緒梨の記憶力、全部そこに費やされてるんじゃないの?」
「そ、そんな言い方しなくたって……ゆりこそ、あたしの性格判ってくれてるくせに、そういう言い方……言ってくれたら思い出すのに」
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