過去は捨てていくモノ

11/30
前へ
/30ページ
次へ
「それよりさ、ね、ね」  ゆりは身を乗り出してあたしの顔を覗き込む。  輝きに満ちたその瞳にまったく心当たりがなくて、ぱちぱち……と何度も瞬きをした。  するとゆりは「ああ、もう……」とじれったそうな声を出し、バッグの中からがさごそと何かを取り出した。  ハガキだ。 「なに? これ……」 「華緒梨、本気で忘れてるの!? 酷くない!?」 「……なんだっけ?」  てへ、と首を傾げると、ゆりの瞳からすっと輝きが消え失せ、わずかな怒りが揺らめいた。 「その、興味のないことすぐ聞き流す癖! 直さないと、嫌われるわよっ!」  まったくもう、とブツブツ言いながらゆりはさっと手首を返し、ハガキをバッグにしまった。  ちゃんと見せてくれる気がないのなら、わざわざ出さなくたって……。 「ハンカチの君のことは忘れないくせに。華緒梨の記憶力、全部そこに費やされてるんじゃないの?」 「そ、そんな言い方しなくたって……ゆりこそ、あたしの性格判ってくれてるくせに、そういう言い方……言ってくれたら思い出すのに」 .
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15175人が本棚に入れています
本棚に追加