過去は捨てていくモノ

12/30
前へ
/30ページ
次へ
「嫌味っぽいって? 当たり前じゃない。そういう言い方しないと、華緒梨は悪いって思ってくれないんだから」 「……ごめん」  ゆりの不機嫌に拍車がかかる前に、謝った。  ゆりが不機嫌を超えて本気で怒り出すと、多分怖い。すごく。  今まで、何のことか判らなくても心を込めて謝れば、ゆりは決してあたしをそれ以上責めなかった。  それに甘えるわけじゃないけど、ゆりの不機嫌具合でちょっとやばいかな……という空気を読んで、しゅんとしながら謝った。  するとゆりはふうと大きな溜め息をつき、肩を竦める。しょうがないわね、と気の強いゆりの譲歩だった。 「言ったでしょ。文芸雑誌の懸賞が当たったの。女の子のペアで来るよう指定されてるんだから、あたしが選ぶのは華緒梨」 「……あっ、思い出した……」  思わずポン、と手のひらを叩いた。  そういえば、先週ゆりに言われていたんだった。文芸誌の懸賞が当たって、有名人の誰それに会えるんだとか何とか……。 .
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15175人が本棚に入れています
本棚に追加