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「嫌味っぽいって? 当たり前じゃない。そういう言い方しないと、華緒梨は悪いって思ってくれないんだから」
「……ごめん」
ゆりの不機嫌に拍車がかかる前に、謝った。
ゆりが不機嫌を超えて本気で怒り出すと、多分怖い。すごく。
今まで、何のことか判らなくても心を込めて謝れば、ゆりは決してあたしをそれ以上責めなかった。
それに甘えるわけじゃないけど、ゆりの不機嫌具合でちょっとやばいかな……という空気を読んで、しゅんとしながら謝った。
するとゆりはふうと大きな溜め息をつき、肩を竦める。しょうがないわね、と気の強いゆりの譲歩だった。
「言ったでしょ。文芸雑誌の懸賞が当たったの。女の子のペアで来るよう指定されてるんだから、あたしが選ぶのは華緒梨」
「……あっ、思い出した……」
思わずポン、と手のひらを叩いた。
そういえば、先週ゆりに言われていたんだった。文芸誌の懸賞が当たって、有名人の誰それに会えるんだとか何とか……。
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