過去は捨てていくモノ

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 淳成社。  ゆりに連れられてやって来た出版社の受付で、彼女の持つハガキと一緒に身分証明書を提示し、案内された4階フロアにエレベーターで上がった。  すると、エレベーターのドアが開いたところにすぐ案内板が立てられていた。  ゆりの話では10組20人くらいしか呼ばれていないとのことだったけど、ずいぶん準備がいい。 【文芸葦原・DIVA合同企画】と書かれた案内板の通り進んでいくと、大きな会議室らしき部屋の両開きのドアが全開になっている。  ゆりと一緒にそっと中を覗くと、早めの時間だというのにもう7・8人の女性がまばらに席について小声で話をしていた。  ゆりは部屋に一歩足を踏み入れながら、口を開く。 「あの、どこに座ってもいい感じですか?」  すると、手前の方の席に座っていたメイクの濃い女の子がうん、と頷いた。 「早い者勝ちでいいみたい。奥のあのへんがガクちゃんの席だって。で、そこの白紙になってる名札に名前を書いて、胸に着けて座ってて、ってさっきオカマさんが」 「オカマ!?」 「ガクちゃんの担当さんだって言ってた。ふふ」  メイクの濃い女の子は自分の連れと顔を見合わせてクスクスと笑った。 .
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