過去は捨てていくモノ

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 虹原岳をこぞって取り上げるマスコミは、何のかんのと理由をつけて若き作家をスクリーンの中央へと引っ張り出す。  判ってはいる。虹原岳がテレビに出るのは、本を売る為。  だけどあたしにはどうしても受け入れがたいのだ。  たまたま優れた容姿をしているだけで、そんなふうに持ち上げられて、話題にしている感じが。  まあ、ゆりは「ガクちゃんがこんなに売れる前から、あたしは好きだったもん」と言うから、彼女をミーハーだなんて思ってはいないけど。  でも、ここに来ている女の子達のうち何人が、彼の作品をまともに読んでいるのだろう。  そんなことを考えると、何だか虹原岳まで気の毒になってきてしまう。  まあ、ただのひねくれた想像にしか過ぎないけど。  そこまで考えて、「何様だろう……」と我に返った。  批評家のつもりはないけど、黙っているとつい思考回路が勝手にくるくると回り出す。  あまり感心できる癖じゃないことは判ってるけど、止まらないものは仕方がない。 .
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