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手に取った紙に目を落とすと、今日の企画の趣旨が書かれていた。
アンケート用紙を兼ねたそれは、この企画が遊びではないことを示している。
好きな作品は……という欄には、ゆりに訊けばいいだろう。
けれど、その作品で心に残った場面は……という問いに答える欄もある。
20人程の集まりで、そんな感想欄にゆりと同じことなど書けない。
アンケートの設問を読み進めていくと、虹原岳の作品をまったく知らないあたしには致命的なものがあった。
【春に実写映画化された『12月の空蝉』は読まれましたか?】
【また、映画はご覧になりましたか?】
【ご覧になられた方は、原作と違うヒロインの生き様をどう受け止めたか教えてください。】
何となく、嫌な予感がした。じわり、と胸に後悔が広がる。
何に対しての後悔だろう。
ゆりの言っていたことを忘れてしまっていたから?
軽い気持ちでここに来てしまったから?
ちゃんとゆりの言ったことを覚えていて、1冊くらい読んでから来た方がよかったんじゃないだろうか。
小説家としては珍しいくらい注目されているからこそ、敬遠してます……なんてここに書けるわけがない。
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