過去は捨てていくモノ

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 好きな人ができたって。  あたしの大学受験があったから、ずっと言えなかったって。  一体どのくらい、黙っていたんだろう。  その間あたしはずっと、大学に合格したら立花先輩とまた会えるようになるって、わくわくしてた。  彼氏と会いたいからって受験頑張った、なんて不純な動機だろうか。  だけど、あたしは励まされていた。  あたしには立花先輩がいてくれるって思ったからこそ、頑張れたのに。  ……こうして、合格発表と共に失うことになるなんて、思いもしなかった。  立花先輩が連れていた女の人の姿を思い返す。  綺麗な人だったな……。  あたしと違って、大人っぽくて、物静かで、色っぽくて。  どうしてあたしと付き合おうと思ったのかって不思議になる程の人だった。  でも、別れ話をするのにどうしてわざわざ新しい人を連れてきたのだろう。  泣き出したあたしに動じることなく、「じゃあ……」と彼女のもとへ歩いていった先輩。  立花先輩は優しくて、気遣い屋さんで、ちょっと子どもみたいな人で……。  だからそんなことをするひとだったなんて想像もしてなくて、びっくりした。 .
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