過去は捨てていくモノ

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 目の中でコンタクトがぐるぐると泳いでいるのが判る。  でも、どうして奥に戻ろうとするの。ぺろっと、出てきてくれればそれでいいのに。  色んな痛みと感情で頭の中がぐちゃぐちゃだ。  それに平常心をすっかり奪われて、更に違う涙があたしの目から零れ落ちた時のことだった。 「……大丈夫か?」  少し鼻にかかったような、ぐっとハスキーで低い声が頭の上から落ちてきた。  男の人だとすぐに判ったけど、よけい戸惑ってしまう。  こんな街中で若い女が泣いてるからって、誰かに声をかけられるなんてあるわけないって思ってたから。  すぐに返事を出来ずに立ち尽くしていると、男の人は溜め息をついた。 「どっか痛いの。誰かに何かされたの」  ぶっきらぼうに訊かれる。  どうやら、空気を読んで立ち去ってくれるという気はないようだ。  ぶんぶんと首を横に振ると、目の前の人があたしの顔を覗き込む気配。  コンタクトの痛みのせいで、ほとんど目が開けられなくて、どんな人なのかまったく判らなかった。  おまけにあたしは超がつくほどのど近眼だし。  眼鏡かコンタクトがないと、たぶん外へ出てはいけないレベル。 「あ、あの、コンタクトが……」 「ああ、ずれた?」 .
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